「復讐大作戦」
 
 
 
  「楽しみだね!」
  「早く着かないかな〜」

  高校の仲良し四人組の、佳奈、梓、美希、祐子は卒業旅行でスキーに行くことになり夜行バスの中ではしゃいでいる。

  「でも私たちスキー始めてだからちょっと恐いね」
  梓と美希はスキーの経験が全くないので少し緊張気味だ。それに比べスキーによく行く佳奈と祐子は
  「大丈夫よ〜」
  「スキーなんて慣れれば超簡単!」
  と余裕たっぷりだ。

  やがてスキー場に到着すると、四人はさっそく着替えてゲレンデに出た。始めは平らなところで経験者の佳奈と祐子がマンツーマンで梓と美希に教える。そして1時間程経ち、梓も美希も少し慣れ始めたとき、佳奈が
  「二人とも慣れてきたことだし、ちょっとリフトで上に行ってみようよ」
  と言い始めた。しかし梓と美希は
  「まだ無理だよ」
  「私たちはここに残るわ」
  と拒否した。しかし佳奈と祐子が
  「絶対大丈夫だから!」
  「私たちがいるから大丈夫よ!」
  と言い切るので仕方なく四人でリフトに乗り上に行くことにした。


  四人は中級者コースですべることにし、リフトを降りた。中級者コースでも梓と美希にはとても滑れるようなコースではない。気がすくむ梓たちに対し佳奈たちは
  「さっき練習したから恐くないよ!」
  「さぁ、ゆっくり行ってごらん」
  と声をかける。梓と美希は言われるがままに恐る恐る滑りはじめた。練習した甲斐あって二人は順調に滑っていった。

  「何だぁ、結構大丈夫ね」
  二人は少し安心した。しかし、それもつかの間だんだん傾斜が急になりはじめ二人は止まることもでず猛スピードで滑っていく。
  「きゃぁぁ〜」
  「誰か止めて〜」
  そしてついに二人は猛スピードのまま転倒してしまった。佳奈と祐子があわてて二人のもとへ駆け付けると
  「うぅぅ」
  「あぁ、痛いよ〜」
  と梓も美希も泣いている。二人は立ち上がることもできず、すぐにレスキュー隊によって近くの病院に運ばれた。

  やがて梓と美希の処置が終わり、佳奈と祐子が二人の病室に入ると、梓は左腕の付け根から指先までギプスをはめられ、三角巾で首から吊っている。美希は右腕を梓と同じく付け根から指先までギプスをはめて三角巾で吊り、さらに右脚は太股から指先まで大きなギプスでガチガチに固められている。


  「大丈夫ぅ!?痛そうね!」
  「すごく痛いけど何とか大丈夫」
  梓と美希は内心では、佳奈たちがあんなコースを滑らしたせいでこんなひどい目にあったと思っていたが口には出さなかった。
  「でもほんとドジよね!」
  「あんなコースでこけて骨折するなんてねぇ」
  「特に美希なんて腕と脚を折るなんて超ドジなんだからぁ」
  と祐子は笑いながら美希の右脚のギプスをバンバンと叩いた。
  「ちょっとぉ、マジで痛いんだよぉ」
  と美希は目に少し涙を浮かべて言った。
  「それじゃあ私たちもう一滑りしてくるわ!また来るね〜」
  と佳奈と祐子はケガした二人を気にもせず病室を出て行った。
  病室に残された梓と美希は
  「マジむかつくんだけど!」
  「あいつらのせいでこんなことになったのに」
  「祐子なんてまだ痛いのに私のギプスを叩いたのよ!」
  「許さないわ!あいつらもいつか同じ目に合わしてやる!」
  と復讐することを決めた。
  次の日、佳奈と祐子は梓たちのことを気にもかけずスキーを楽しんでいる。その頃、梓と美希は病室で
  「私、ギプスって始めてはめたわぁ」
  「私もギプス初体験やで!ギプスって超固いねんなぁ」
  「うん、ガチガチやし〜!しかもギプスの中めちゃかゆいやんなぁ!ほんま不自由やわ〜」
  「私なんか腕と脚やからほんま何もできへんわぁ」
  「そや、お互いのギプスに落書きしまくろぅや」
  「そうしよ!ギプス真っ白のままやったらさびしいもんなぁ」
  とギプスでそれなりに盛り上がり楽しんだ。


  2日後、二人は退院して佳奈、祐子とともに家に帰ることにした。美希は右腕を三角巾で吊り、左手で松葉杖を持って何とか自力で歩くことができる。帰りのバスに乗でも、ギプスをはめた二人をよそに佳奈と祐子はスキーの話で盛り上がり、梓と美希は会話に入ることができず、ただ自分のギプスをさすりながら
  「私もスキーしたかったなぁ…」
  とつぶやくだけだった。やがてバスも地元に着き四人は別れて自分の家へと帰った。

  四人はそれぞれ別の大学が決まっていて、これから春休みだ。しかし梓と美希はギプスのせいであまり遊ぶことができない。 特に美希は腕と脚をギプスで固められているため家からもあ
まり出れず春休みを台無しにした。
  春休みも終わり、四人は別の大学で新生活をスタートさせた。
  やがて梓と美希のギプスも外れ、ようやく自由になった二人は休日に喫茶店で復讐の計画を立てることにした。


  「久しぶり!」
  「久しぶり〜!やっとギプスも外れたね」
  「入学式なんて腕と脚にギプスして行ったから周りから超変な目で見られたし〜」

  「全部あの二人のせいよ!許さないわ!」
  ふたりはそれからも定期的に会い計画をたてた。
  そして冬休みになり、二人が復讐を実行するときがきた。梓と美希は、佳奈と祐子に電話でスキーへ行こうと誘う。佳奈たちは予想どうりあっさりオッケーし、四人は去年と同じスキー場へ向かった。
  一日目は四人ともスキーを楽しみ何事もなく民宿へ帰った。そして梓と美希は佳奈たちが完全に眠るのを待ち、熟睡していることを確かめると、佳奈と祐子のスキー道具の中からストックを取り出し、持ってきた小形ノコギリでひびをいれた。
  次の日、梓と美希は
  「私たちはここらへんで滑っとくから二人は上級者コースに行ってきなよ」
  と佳奈たちにに勧める。佳奈たちも上級者コースへ行きたかったのか、喜んでリフトに乗って行った。
  「よ〜し、予定どうり!あとはあいつらがケガするのを待つだけ」
  と梓と美希はその時を待った。
  佳奈と祐子は上級者コースに着き、さっそく滑り始める。しかし、梓たちがストックに入れたひびがだんだん大きくなり、ついにボキッと折れた!
  「きゃあ!助けて〜」
  佳奈と祐子はとても急な斜面を下まで転げ落ちていった。二人はすぐに病院に運ばれ、病院から梓の携帯に連絡があり
  「よっしゃ〜!」
  「ざまぁみろ!これで復讐完了♪」
  と喜んで病院へ向かった。


  病室に入ると、梓たちよりもさらに急な斜面で転倒したためひどい姿になった佳奈と祐子がいる。佳奈は両腕と右脚をギプスでガチガチに固められ両腕は天井から吊り下げられている。祐子は両脚をギプスで固められ天井から吊り下げ、首にはコルセットをしている。
  「うぅ…痛いよぉ」
  佳奈と祐子は苦痛に顔をゆがめている。そんな二人に梓と美希は
  「前に人のことドジどか言うといて自分のほうが大ケガしてドジやん!」
  「ほんま情けないなぁ〜」
  と笑いながら佳奈と祐子のギプスを何回もバンバンと叩いた。


  「きゃぁぁ〜痛いぃ」
  「ぐぅぅ痛いよぉ〜」
  とあまりの激痛に泣き叫ぶ二人をよそに梓と美希は病室を出て、顔を見合わせ、にこっと笑みを浮かべて言った。
  「大成功♪」