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koba

Sorry Japanese only

複眼

第一章

鏡にうつった細く、綺麗なあご。

美しく整いうっすらと赤みを帯びた唇。

張りのある肌と艶。

若い女性。    しかも美人。

  

ゆっくりと顎から鼻に向かって舐めるように鏡をみあげていくとそこには似つかわしくもない青いしみのようなものが。 

痣?  怪我?  喧嘩? 事故? どうしたんだろうすごく気になる

 

青いあざの上の大きく切れ長の目はひどく充血していて真っ赤になっている、彼女は手で眼のしたの痣をゆっくりと触り鈍い痛みに悲痛な声にならないうめきを出した。

事故でひどく目を打ったようだね。 可愛そうに・・

 

大きく開いた目じりは痣があり充血しているが、日頃の化粧の後が微妙に残り、涙で流れたマスカラの跡のようなニュアンスで見方によっては色気を引き立たせていた。

うっすらと香水の匂いの中に消毒液の匂いがする、病院から戻ったところかな?

不思議と彼女から発しているであろうと思われる消毒液の匂いは病院のそれとはイメージが違い違和感はなくそれどころか好ましくさえ感じられる。

 

「ちっ」と思わず人前で使わないような言葉を口にして

自分の赤く充血した目と周りの痣に失望したかのように肩を落とした。

引き出しに手をやり何かを探る仕草を続けるが何処かぎこちない動き、引き出しを開けるのにも何かを取り出すのにも引き出し側とは逆の腕しか使わないからのようです。

 

引き出しから出した眼帯を箱から出そうと胸に箱を押し当て左手のみで器用に動作を続ける彼女は右手が使えないの?

 

その疑問はすぐに後姿の右手の二の腕に見え隠れする白く巻かれたもので理解できた。

腕も怪我してるんだ。

 

眼帯を片手で懸命に付けようとしている際に見えた右腕には二の腕までしっかりと固定するギプスが巻かれていた。 包帯ではなくギプス

 

目の痣  腕は恐らく骨折かな? とても痛々しくて不憫に見える。

 

おそらく利き腕でしょう。 彼女は眼帯を箱から不自由そうにだしてガーゼを紙パックから口で破いて出した。

それを眼帯に乗せようとおなかを使い試みるがうまくできず、ついにはテーブルの上にて作業の必死に続けていた。

 

しかし硬く硬化したギプスが自由を奪い微動だにも動かない右手は何の役にも立たない様子。結局、左手一本で眼帯をつけるにも時間を要した経験は嫌な思い出となったが、辛抱強く怪我生活になじもうとする仕草はけなげに見えました。

 

ようやく眼帯の装着を終え、鏡から離れ、左目だけであたりを見る仕草は上目使いになりきょろきょろと首を振る様さは愛くるしい表情でとてもかわいい

 

「できた?」

 

後ろから男性が待ちくたびれたように声をかけた

 

驚かない様子で

「うん。  何とかね  助けて欲しかったけど何とか・・」

 

と今までの表情からは想像もできない明るい声で男性に返事を返す彼女

 

すると後ろからパジャマ姿の男性が近づき彼女を抱えて

「手、足ギプスじぁ  入院したほうがいいって だって不便だろ」

 

といい彼女を抱っこしてベットに運びそっと下ろした。

 

彼女の足にはやはりギプスが巻かれており腕と同様に固定されていた。

 

すっごい 可愛そう。 どんな事故だったか想像もできないけどこれじゃ入院したほうがいいっ誰だって思うよね。

 

こういった環境の二人だけどなぜか?二人の一緒の時の表情は暗さもなくいらだちを見せていた彼女の表情も不思議と彼の前では自然な状態で和んでいるように見える。

 

先ほどの鏡の前でみせた表情は自分への叱咤だったのか? 

彼に抱えられベット連れて行かれた瞬間、彼女は自由の利かない腕、足に無理に力を加える事をやめ、全身の力を抜き、男性に触られる人形のようにただ、目を瞑ってなされるがままにしている。

不思議だ? でも仲がいいことと彼女の怪我が完治することは分かったようなきがします。


to be continue