読み物

黒澤

Sorry Japanese only

先生へ

 

先生、あの時骨折した足はもう良くなりましたか?

僕は、高校3年の2月に起きた出来事を、一生忘れることはないと思います。

 

あの日の放課後…。

それは全く偶然に忘れ物を取りに来た僕が、階段の下で倒れている先生を見つけたのは、先生がまぶしいほどに白く輝くギプスを巻いて登校された日のことでしたよね。

人影のない薄暗い校舎に2人きりで出会えた奇跡。

 

先生は松嶋菜々子みたいで、僕ら男子校ではマドンナみたいな存在だったから、こんなふうに二人きりで出会えるなんて夢にも思ってなかったし。

可哀想に先生は、倒れた姿勢のまま少し失禁していて、動けなくなっていたんだよね。

駆け寄った僕は、先生を抱いて教室に運んだんだ。

なぜ教室に向かったのか?今思うと不思議だけど、冷たく凍えた先生を、着替えさせてあげたかったから。

大人の女の人なのに、僕の腕のなかでは小さな子供みたいにかわいかったよ。

 

こんな汚いジャージしかなくてごめんね。

先生は僕の敷いたコートの上で、遠慮がちにスカートとストッキングを脱いでくれた。

膝下のギプスの足がとても痛そうで、思わず僕も手伝ってしまったけど、先生は手を振り解かなかったんだ。

薄暗い教室の片隅で、横たわるギプスの先生の白い身体。

気が付くと僕は、自分が抑えられなかった。

 

先生はいやいやをするように小さく抵抗したけど、あきらめたように胸のボタンを自らはずしたよね。僕が怖かった?

声にならない叫びのような先生の息遣いが、いとおしくて僕は体の向きを変えて先生のギプスを抱きしめた。

あの、硬くてざらざらした感触が、今でも忘れられないよ。

動けないように固定されたギプス。

唯一抑制を許された先生の指先が、かすかに震え動いていた。

白く長い足先の、薄いピンクのペテキュアが、今まで経験した何より僕を興奮させたから?

思わず僕が足先に口付けををしたら、先生はのけぞるような姿勢でアゴをあげて、唇を開いてキスを促したんだよね。

 

大丈夫。誰にも言ってないよ。

僕はもうすぐ22になるけど、どうしてもあの夜が忘れられない。

寒い教室で、硬いギプスの先生を抱きしめた日のこと。

緊張しすぎて先生が気持ちよかったか?なんて思う余裕はなかったけど、今、思い出すと先生も感じてたよね。

先生は僕をすんなりと受け入れてくれたし、不自由な身体で手伝ってくれたし。

女の人の身体の中が、あんなに暖かいものだと教えてくれたのは先生だから。

 

卒業式も松葉杖だったし、立ち上がれないほど痛む足だったのに、僕は先生に酷いことをしてしまったのではないか?と少し後悔してるかもしれない。

僕の3年間の何より強烈な思い出として、先生は永遠に僕のマドンナです。

今でも大好きです。

 

時折、ギプスの女性を見かけます。

それは先生じゃないのは分かっているけど、僕は目を離すことができません。

春に、久しぶりに帰郷します。

まだ先生は同じ学校に勤務していると聞きました。

僕との時間を作ってくれますか?

 

 

 

元3年D組 黒澤光明

NORIKKUさんへ

後に結婚されたと聞いて、出せなかった手紙です。

僕の大好きだったギプスのマドンナへの手紙を添付します。