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由紀子の悲劇4/13update4/13UP
昨年の夏のある日の事であった。大阪のある商社でOLをしている由紀子(年 齢24歳)が土日を利用して、 愛車の750ccのオートバイで六甲山にツーリングに出かけた時のことであった。

由紀子は気持ちよく風をきりながらスピードも上がり調子でS字カーブを颯爽 と走っていた時、由紀子に 悲劇が襲った。前方から滅多に通行しない4トントラックが現れ、大きくセンタ ーラインをオーバーしながら曲がってきた時、その悲劇は起こった。由紀子はト ラックの出現に驚き、ハンドル操作を誤まった末、トラックと正面衝突し、オー トバイごと体全体がトラック正面の下敷きとなってしまった。トラックは急停車 し、運転手は怪我もなく青ざめた顔でトラックから降りてきた。

トラック正面の 下を覗くと、無惨にオートバイと彼女の体が絡み合っていることが確認でき、そ の運転手は自分の携帯電話で110番通報するのであった。

3分後、警察、救急、レスキュー隊が現場に駆けつけ、彼らの懸命な救出作業 と現場検証が始まった。レスキュー隊員が「大丈夫ですか〜、しっかりして下さ いよ〜、必ず助かりますからね〜」と声をかけても返事がなく、死亡しているの ではという雰囲気に一瞬包まれた。

 しかし隊員による懸命な救出作業のおかげで、約1時間後ようやく彼女を救出 できたのであった。 彼女は全身血だらけの上、意識もなく手足の骨も飛び出ている状況で、呼吸がな んとが出来ている状況であった。直ぐに救急車に運び込み、応急処置をしながら 搬送先である大学病院の高度救命救急センターに運び込まれた。

搬送先である大学病院の高度救命救急センターでは、受け入れ態勢が万全で、 外科、整形外科の医師と看護婦3名が彼女の救急処置にあたった。その後、全身 のレントゲンとCT(断層写真撮影)、 心電図等々様々な検査が行われ、彼女の怪我の状況が明らかになった。 両鎖骨骨折、両腕右上腕骨、手首、手根骨粉砕骨折、肋骨3ヶ所亀裂骨折、両 足大腿骨及び膝蓋骨複雑骨折、踝骨粉砕骨折の計14ヶ所の骨折と診断され、2 人の整形外科医が骨折部分を次々と手術を実施し、術後処置として彼女の体には ギプス包帯が巻かれることになった。ギプス室に運ばれた彼女はまだ意識もな く、医師、看護婦を含め4人が彼女の体全体に次々と手際よくギプス包帯を巻い ていくのであった。その彼女の姿は何とも言えない痛々しいミイラのような姿に なり、頭部以外はギプス包帯で完全に固定されて全く動けない状態となってしま った。


あとは由紀子自身の意識が戻ることを願うだけだった。
<集中治療室(ICU)にて>
 意識不明の由紀子は、集中治療室で医師や看護婦さん達の懸命な治療の末、よ うやく意識が回復したが、自分自身の現状を理解できないことと、体が全く動か せないことで悔し涙をこぼす由紀子であった。
 その後、担当の主治医が由紀子の側に近寄り、由紀子に声をかけた。

    「大変な事故でしたね。」
    「自分のお名前と生年月日、言えますか。」
由紀子:「斎藤由紀子といいます」
    「生年月日は、昭和50年6月22日です。」
主治医:「痛いところありますか。」
由紀子:「体のあちこちが痛みます。」
    「それで私の体はどうなったのですか、先生!」

主治医:「体のあちこちの骨が折れたりヒビが入っていたりしていてね、絶対安 静の状況かな。」     「それにしてもあれだけの大事故で助かったのが不思議なくらいだよ、 よほど運があるんだね。    

これからの人生、大切にしないと…。」
由紀子:「運なんて良くないですよ。こんな大怪我をしてしまって。完全に治る までどのくらいかかるのですか?」

主治医:「そうだね、これだけの大掛かりな全身ギプス包帯をしているから ね。」

由紀子:「えっ、体全体にギプスをしているのですか?」
主治医:「そうだよ。貴方の骨折はひどかったからね。」

由紀子:「足も手も全く使えないんですか?先生!」

主治医:「可愛そうだけど2ヶ月はこの状態かな?」

由紀子:「この状態で2ヶ月もですか…。食事やトイレはどうするんですか?」

主治医:「当分の間、点滴で我慢してもらうからね、それとトイレは既に貴方の
あそこからパイプで容器に      つながっているのでいつでも出来るから心配しないでいいよ。」

由紀子:「点滴ですか、仕方ないですねこの体では…。」
主治医:「それだけ会話が出来たら意識のほうはもう大丈夫だね。あとは骨折が 一日も早く治すことに専念  
   することだね。」

由紀子:「はい、気が遠くなりそうだけど、これも人生の1ページだと思って気 長に治療に専念します。
     先生、くれぐれも宜しくお願いします。」
看護婦:「斎藤由紀子さん、京都のご家族と連絡がとれましたからね。明日朝一 番にもこちにこられるそう
     です。」
主治医:「さぁ、もう消灯の時間だね。まだ痛んで寝にくいと思うけどゆっくり 休むんだよ、おやすみ…。」
つづく……